FUKUOKA 48 Hour Film Project 2022にて本学の映画制作チーム「人間車」の制作した短編映画『盛』が学生部門賞・審査員特別賞を受賞した。監督・脚本を担当した放送・映画学科2年の松田茉子(まつだまこ)が受賞までの道程を語る。
作品概要
FUKUOKA 48 Hour Film Project 2022出品作品。田舎にあるという七子の家へ招かれた女学生たちは、狂気に満ちた異様な光景を目の当たりにする。観た者に強烈なインパクトを残す短編ホラー映画。学生部門賞・審査員特別賞を受賞。
48時間で映画を撮る!?
48 Hour Film Project とは、脚本、撮影、そして編集と、すべての映画製作の過程を48時間以内で行い、1本の短編映画を完成させるという、他に類を見ない過酷で刺激的な映画製作コンペティションです。
48 Hour Film Projectは2001年以来、世界各地の都市で開催され、2019年度は五大陸120都市で開催、6万人近い参加者によって4千もの映画が作られました。現在では世界約130の都市で開催され、日本では東京・大阪・福岡で開催されています。各都市のコンペティションでは、最優秀作品“Best of City Film”が選ばれ、その都市の代表として世界各都市の代表と競います。
そして、その中から選出された10作品は、カンヌ映画祭短編映画部門で上映されます。
(FUKUOKA 48 Hour Film Project公式サイトより引用https://48hfp.fukuoka.jp/about/)
また、制作は48時間以内というレギュレーションの他にも、ジャンルとお題も設定されている。制作する映画のジャンルは2回の抽選で提示されたものから決定され、各チーム共通のキャラクター・小道具・台詞を作品に登場させなければならない。
今回、松田さんら「人間車」に課されたのは以下のものである。
ジャンル
ホラーorミュージカル ※ホラーを選択
共通お題
キャラクター:黒井 月人 or 黒井 月夏 (くろいらいとorらいか) 職業・属性:声優
小道具:領収書
台詞:“口は災いの元よ!”
憧れ、好奇心、そして不安。
突然の申し出だった。週末に行われている本学の体験入学にスタッフとして登校していた私は、「九州ビジュアルアーツの学生が映画のコンペで学生部門賞を受賞したから、記事を書いてみないか」という打診を受けたのだ。それも、今まで一度も関わったことのない教員からの。折角の機会だから、と他の講師の後押しもあり、インタビュアーとして今回の記事を制作することになった。インタビューの相手は放送・映画学科の松田茉子さん。FUKUOKA 48 Hour Film Project 2022 学生部門賞・審査員特別賞の受賞作『盛』では監督と脚本を担当している。
松田茉子(まつだまこ) ・専門学校九州ビジュアルアーツ 放送・映画学科 映画コース ・『盛』監督/脚本 担当 高校時代、映画『殺さない彼と死なない彼女』に感銘を受け、映画監督を志す。「映画監督 なりかた」と検索したところ、九州ビジュアルアーツのホームページがヒットし、本学への入学を決意。クラスメイトや講師と意見を交換しながら、映画監督という夢に向けて日々精励している。
——この度は学生部門賞、審査員特別賞の受賞おめでとうございます。受賞してのお気持ちをお聞かせください。
松田:ありがとうございます。正直、賞を貰えるとは思っていなかったです。仲間同士で「優秀賞獲ってカンヌに行くぞ」とは言っていましたが、他の制作チームはプロばかりでしたから。せめて他の学生チームには負けない作品を制作したいと思っていたので、学生部門賞の受賞は本当に嬉しいです。
——今回、FUKUOKA 48 Hour Film Projectに参加した動機は何だったのでしょうか?
松田:昨年の48 Hour Film Projectに講師の長沼さんが参加されていたことを知ったのがきっかけです。とても楽しそうだったので、「私もやりたい」って思ったんです。ただ、48 Hour Film Projectというコンペの性質上、一体何をどこまで準備すればいいのか全然わからなくて凄く不安ではありました。
——映画制作チーム「人間車」とはどのようなチームですか?
松田:今回参加してもらった学外の友人1人を除けば、九州ビジュアルアーツの学生のみで構成された映画制作チームです。放送・映画学科の2年生を中心に20人ほどのメンバーがいます。
FUKUOKA 48 Hour Film Projectに参加したいと思ってから、まず始めたことが制作メンバーを集めることでした。2年生になった4月頃からメンバーを募っていたのですが、なかなか集まらなくて。夏休みになってようやく結成まで漕ぎ着けました。苦労はしましたが、放送・映画学科の精鋭を集めた最高のチームになったと思っています。
怒涛の48時間 制作
——48時間というあまりに短い時間での映画制作でしたが、やはり大変でしたか?
松田:とても大変でした。でも、クラスメートの皆と協力して、全力で一つの作品に取り組むのは、1年生の時に初めて撮った自主制作映画ぶりだったので、とても楽しかったです。
——では、制作の様子についてお聞きします。FUKUOKA 48 Hour Film Project 2022は2022年9月9日(金曜日)から11日(日曜日)までの3日間で開催されました。まずは初日の動きについて教えてください。
松田:9月9日はキックオフイベントがありました。このイベントでは映画ジャンルの抽選と共通お題の発表がありました。
——ジャンル抽選はトップバッターでしたね。ホラーとミュージカルを引き当てましたが、抽選結果はどのように受け止めましたか?
松田:正直最悪でした。直前にメンバーと「ホラーとミュージカルは引きたくないね」と話していたのに、その両方を引いてしまったので、思わず笑ってしまいました。ミュージカルは音楽を扱うジャンルなので、技術的にも時間的にも難しいんです。私たち「人間車」では対応しきれないと思い、ホラー映画を選択しましたが、ホラー映画も今まで撮ったことがなくて……。
——共通お題についてはどうでしたか?かなり癖のあるお題だったと思うのですが。
松田:小道具の領収書は特に困りましたね。脚本を書く時にかなり悩んだ部分です。最終的に、紙吹雪のようにヒラヒラ舞わせるという使い方に落ち着きました。
——脚本はいつ頃完成させたのでしょうか?
松田:キックオフイベントのあった9日の0時前には完成しました。48時間しかないので、予めざっくりとしたタイムスケジュールを組んでいました。9日中には脚本を完成させて、10日は1日撮影。残りの時間で編集して提出という感じだったので、キックオフイベントが終わってからはずっと脚本を練っていました。頭の中がぐるぐるして、なかなか考えがまとまらなかったのですが、なんとか時間通りに書き上げることができました。
——では、9月10日の撮影の様子を教えてください。
松田:朝7時頃にロケ地である田川郡福智町に集合しました。撮影する場所はクラスメイトのおばあさまの持っている家を使わせてもらいました。急いで準備をして撮影を始めたのですが、最初のカットが思うように撮れず、かなりの時間がかかってしまって……。私を含むメンバー全員が感覚を掴めていなかったのだと思います。どんどん時間が過ぎていって、「このままだと完成しないかも」という焦燥感から、現場の雰囲気も重たくなってしまいましたね。でも、途中から楽しくなってきて。予定時間を3時間ほどオーバーしましたが、無事に撮影できました。
——何か転機があったのでしょうか?
松田:エキストラが無表情で踊るシーンの撮影が転機でした。私自身、変なシーンだと思っているのですが、一番撮りたかったシーンでもあったので、とても気に入っているシーンです。その撮影中に皆笑ってしまって。焦りはありましたが、緊張が和らぐというか、前向きな気持ちになれました。メンバー同士の軽い衝突はありましたが、それだけ皆が作品に熱量を注いでくれたのだと思っています。




——撮影後は編集作業に入るわけですが、最終日はどのような様子でしたか?
松田:そのまま撮影現場に留まって作業を行いました。とは言っても、編集はどうしても個人作業になるので、編集を担当した春髙君と綿井君にかなり頼ってしまいました。撮影中でも素材の整理を行なっていてくれて、とても助かりました。撮影が終わったのは10日の0時頃だったのですが、そこから11日のお昼前までずっと作業をしてくれました。田舎の静かな夜にパソコンのキーボードを叩く音が響いている光景は、今でも鮮明に覚えています。彼らのおかげで、想像以上に早く仮パケが上がりました。その後は、九州ビジュアルアーツに戻って音声の編集を行いました。


——最終日は順調だったのですね。
松田:実は違うんです。映画と一緒に提出する書類が足りないことに気がついて……。とても焦りました。ここでは溝上くんに助けてもらいました。タイムリミットの2時間前は映画も書類も完成して、無事に提出することができました。本当に皆の協力のおかげです。
——最終日にはドロップオフイベントもありました。提出を終えた後はどのように過ごされましたか?
松田:皆でできなかったことや悔しかったことを話し合いました。反省会ですね。私自身も演出や説明の不足など、探せばキリがないほど反省があります。でも、これが私たちの今の実力なので、しっかりと受け止めて成長の糧にしたいです。
48時間で実感した仲間への想い
——改めて、FUKUOKA 48 Hour Film Projectに参加しての感想をお聞かせください。
松田:凄く大変でしたけど、とても楽しかったです。今まで学校の課題として5本の映画を制作してきましたが、どうしても作品に関われないクラスメイトがいたり、どこか手を抜いてしまったりで、寂しさやもどかしさが残っていました。ですが、今回参加したFUKUOKA 48 Hour Film Projectは48時間の中で「人間車」の全員が全力で作品に取り組めました。メンバーの皆には感謝の気持ちでいっぱいです。皆が助けてくれたから賞が獲れたと思っています。
——卒業まで残り僅かですが、「人間車」として今後も作品は制作するのでしょうか?
松田:またやりたいです。今回のメンバーは最高だと思っているので、48時間以外の映画も撮ってみたいです。でも、難しいかもしれません。それぞれ別の制作も行なっていますし、卒業後の進路もバラバラなので……。ただ、今後も脚本を書き続けたいと思っています。
撮れるうちに撮れ!!
——本記事は九州ビジュアルアーツのホームページでも紹介される予定です。本学への入学を検討している高校生も見るかもしれません。これから映画制作をやってみたいと考えている人にメッセージをお願いします。
松田:そうですね……。「映画は撮れるうちに撮れ」ですかね。高校生のうちは機材や設備、出演者を用意するのは大変ですけど、脚本は道具がなくても書けるし、スマホでだって映画は撮れます。とりあえず挑戦してみてください。そうすれば、自分のやりたい事や必要な材料が明確になってきます。それを踏まえて九州ビジュアルアーツに来てください。講師の方や仲間、機材など大体のものは揃っています。お互い頑張りましょう!

インタビューを終えて
インタビューを終え、写真撮影のために松田さんが持ってきたのは2枚の表彰状であった。「人間車」のメンバー全員の努力と熱意が認められた証。「講師の方が額縁をつけてくれたんです」と嬉しそうに抱えられた2枚の表彰状は眩しく輝いて見えた。
(インタビュアー:マスコミ出版・芸能学科 若松大生)
放送・映画学科では現在、2023年2月11日に開催を予定している上映会『ウチらの₹˝ャʓ事変💖卍🧋』に向けて準備を進めている。詳細は未定だが、是非チェックしてほしい。
上映会宣伝用Instagramアカウント:『ウチらの₹˝ャʓ事変💖卍🧋』
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